一部の場合を除き、基本的には良くないイメージとなっている「両建て」

そもそも両建てとは何なのか?
両建てはなぜイメージが良くないのか?

そのあたりについて解説していきます。

両建てとは

両建てとは、一言で言うと、

「同一通貨ペアで、買いポジションと売りポジションを持つこと」

です。

例えば、ドル/円で1万通貨の買いポジションと売りポジションを同時に持っているような状態を指します。

両建てのデメリット

では、なぜ両建てを行なうことは良くないとされるのか?

まず、両建てを行なうと、相場がどういう動きをしようと為替差益も為替差損も出ないことになります。

先ほどの例の通り、ドル/円で1万通貨の買いポジションと売りポジションを持っている場合に、1円の相場上昇があったとしましょう。
その場合の含み益と含み損は・・・

●1万通貨の買いポジション ⇒ 1万円の含み益
●1万通貨の売りポジション ⇒ 1万円の含み損

・・・となり、完全に相殺されてしまいます。
全く無意味なのです。

いや、無意味どころかむしろ損をします。

まずはスプレッド
1万通貨分買った時と売った時の2回分のスプレッドが、FX口座へ支払う手数料としてかかってしまいます。

次にスワップ金利
ドル/円の場合、買いポジションの方はスワップ金利をもらえますが、売りポジションの方は逆にスワップ金利がマイナスになってしまいます。

そして、もらえるスワップ金利よりも、マイナスとなるスワップ金利の額の方が大きいのです。

となると、両建てをすることにより、為替の変動ではプラマイゼロの状態が続く反面、スワップ金利の方で毎日地味にマイナスを積み重ねていくことになります。

両建てのデメリットのまとめ

●どのような値動きをしようが常に利益と損失が完全に相殺されるため無意味

●スプレッドによる手数料だけがかかる

●スワップ金利で地味に毎日マイナスを積み重ねることになる

両建てのメリットは少ない

上記の理由から、基本的には両建てはしない方がよいです。
そのため、FX口座によっては両建てが禁止となっているところもあるほど。

相当なFX上級者の場合は、複雑なテクニックを駆使したり、高度な戦略を組み立てたりすることで、

●つなぎ売り
●経済指標発表時
●税金調整

・・・などでメリットを生み出す投資も可能となりますが、かなりの手間とリスクが伴います。
FX初心者はもちろん、中級者クラスであっても、安易に両建てに手を出すべきではないでしょう。

両建てなどというリスキーな手法を取らなくとも、FXは普通に資産を増やせる金融商品ですので、あえて両建てを駆使しようとするメリットはないと言えます。

両建てを駆使したスワップ金利狙いの長期投資

「両建てはしない方がいい」と書いたばかりですが、ここで一つだけ、両建てを駆使したテクニックを書いておきたいと思います。

それは、

「為替変動による収支が完全にゼロになることを活かした、スワップ金利狙いの長期投資戦略」

です。

これだけでは何のことやらわからないと思いますので、具体的に説明していきます。

両建てでスワップ金利をプラスにする方法

先ほど、両建てを行なった場合はスワップ金利で日々マイナスが積み重なるというデメリットがある、と書きました。
しかし、これは【同一のFX口座】で行なった場合に限ります。

例えば、「GMOクリック証券」。
こちらでドル/円を1万通貨買った場合、スワップ金利は約70円となります。
そして、売った場合のスワップ金利が約-72円。
つまり、1日2円ずつ損をしていくことになります。

そして、「DMM.com証券」。
こちらでドル/円を1万通貨買った場合、スワップ金利は約64円となります。
そして、売った場合のスワップ金利が約-64円。
特に損はしませんが、プラマイゼロとなってしまうため全く意味がありません。

※スワップ金利については、いずれも2019年3月時点のもの

さて、勘の良い方はこれでわかったかもしれません。

そうです。
それならば、「GMOクリック証券」でドル/円を1万通貨買い、「DMM.com証券」でドル/円を1万通貨売ったらどうでしょう?
買いスワップとして毎日約70円手に入り、売りスワップとして毎日約64円マイナスになる。
差し引き、毎日約6円のプラスとなります!

利息として考えれば充分な数字

「たかが6円」とお考えの方もいるかもしれません。
しかし、塵も積もればなんとやら。
何もしないで、ほぼノーリスクで毎日6円入ってくるという状況などなかなかないはずです。

しかもこれは、1万通貨分の取引での話。
10倍の10万通貨で取引すれば、毎日60円入ってくることになるのです!

毎日60円ということは、一か月で1,800円。
一年で見れば21,600円。
一度両建てした後、ただほったらかしておくだけで毎年21,600円です。

さらにさらに、10万通貨ではなく100万通貨の取引ならば、毎年216,000円の金利収入となるわけです!
まあ、100万通貨ずつ売り買いするとなると、最低でも1,000万円、できれば1,500万円くらいの資金が必要なので、ちょっと難しくなってきますが・・・

しかし、10万通貨ずつの売り買いならば、100~150万円ほどでいけます。
預金だと思ってこれくらいのお金を預けて両建てをしておけば、毎年21,600円の金利が入ってくる。
そう考えれば、決して悪い投資ではないですよね。

銀行の普通預金の金利が「0.001%」という絶望的な数字であることを考えると、だいぶマシではないでしょうか。

もちろん注意点やリスクも存在

さて、ここまで美味しい部分だけを書いてきましたが・・・
もちろん、注意点やリスクも存在します。

まずは各FX口座が提示するスワップ金利
上記は、2019年3月時点のものですが、各FX口座が提示するスワップ金利の額は変更されることがあります。
どういった値を提示するかは、FX業者の自由なので。

スワップ金利は各FX口座がウリにしている部分でもあるので、そう簡単には変更しないでしょうが、とはいえいつ変更されるかはわかりません。
提示額が変更されれば、上記のような各社のスワップ金利による金額差を利用した手法が通じなくなってしまう場合もあります。

あとは、政策金利の変更リスクにも要注意。

スワップ金利は、各国が定める政策金利のパーセンテージによって決まってきます。
しかし政策金利は、その時その時の国の経済状況などによって常に変動するもの。
数か月に一度くらいの変動は普通にありえます。

そして、変動の仕方によっては、それまで得られていたスワップ金利がガクっと変わってしまうこともあるのです。

こうしたリスクもあるため、手放しで進められる戦略ではありません。
しかし、「各FX口座のスワップ金利情報」「各国の政策金利」について日々注目し、自分の持っているポジションをしっかりと管理できるのならば有効な投資手法となるでしょう。

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